悪魔の囁き

厚生労働省村木厚子さんが逮捕・起訴・無罪になった一連の事件。村木さんに無罪判決が出た翌日に放送されたNHKの『追跡AtoZ』という番組では、何故検察は敗北したのか?というテーマで裁判の様子や証言者から無理矢理村木さんに不利になるような証言をさせた実態などを放送していた。


その中で、今話題になっているフロッピーディスクの日付の事も取り上げられていたんだけど、番組の中ではFDの更新日時は2004年6月1日のままで、その日にちでは村木さんが関与していないという事になる、と説明していた。でも特捜部は自分たちの筋立てを見直す事はせず、FDも証拠品として採用しなかったので、何故前田容疑者が後になって日付を改ざんしたんだろう?と不思議に思っていた。


前田容疑者が逮捕された後、再びNHKで特集番組が放送された。その番組での情報をもとに時間で整理すると、


・去年5月 上村元係長逮捕
      自宅からフロッピーディスク押収
・去年6月 村木さん逮捕 容疑否認
・その3週間後 起訴
・その9日後 前田容疑者FDデータ改ざん
       ↓
FDなど証拠品の一部を上村元係長の弁護団に郵送で返却



という流れになる。返却されたFD日付(6月8日と改ざんされたもの)を見た時の様子を語る弁護団

(鈴木一郎弁護士)
『(書類を作成したのは上村から6月1日だと聞いていたので)パニック状態でした。何なんだこれは?という感じ』



弁護団が6月8日作成と書かれたFDを証拠品として裁判所に提出すれば村木氏が書類作成を指示した可能性が高くなり上村の罪は軽くなる。しかし村木氏の罪は重くなる。

(再び鈴木弁護士)
『仮に情状弁護だけでいこうと、村木さんの関与を認めようという方向で弁護方針を固めていたら、恐らく6月8日のFDが村木さんの関与を補強する証拠として公判に出て、それが当然報道陣に伝わるわけだから、村木さんの弁護団にも伝わる。そうしたら、そのもとで村木さんの弁護団も、「果たして否認を貫いていけるかどうか」と考えたと思う。』


(下村忠利弁護士)
『上村弁護団に仕掛けられた時限爆弾を我々が使う事によって村木さんを有罪にするという冤罪がでっちあげられていたとしたら非常に恐ろしい事になっていた。我々が利用されてその役割を果たしていたかと思うとぞっとする。』



もちろんこれは今の段階では弁護団の推測の域を出ない解釈だけど、前田容疑者がデータを書き換えた自覚があるFDを、訂正する事もなく送り返すからにはそれ相応の目的があったからだと思う。「自分の手柄のためにここまでするか」という憤りが湧いてくるけれど、検事と言えども未熟な人間なので、一瞬の魔が差してこういう愚行に手を染める事が誰にも無いとは言えない。


問題は、こういう個人の暴走を許してしまう管理の甘さと、客観的証拠よりも証言を重視する方針、起訴されたら99%有罪、という日本の検察と裁判所の馴れ合いになど、他にも大きな要因があると思う。