加害者家族にできる事とは

大阪で、23歳の母が子供2人を置き去りにして死亡させた事件があった。子供はしばらく生きていて、インターフォンから外に向けて母親を呼ぶ声が響いていたというのを聞くと、もしかしたら罪を犯した母親よりも、その声を聞きながら子供達を助けられなかった近所の人達の方が心にダメージを負っているかも知れない。


それにしても、毎回こういう虐待事件が起こる度に議論され、いつの間にか立ち消えになってしまうけれど、児童相談所の存在意義って何?


報道で知る限りだと、児童相談所の人達の対応が子供のためというよりも、自分達の組織運営を穏やかに進めたいという方向に強く傾いているように見える。例えば動物園の従業員に「動物の接し方の専門知識は無いですし、人並み以上の動物への愛着もありません。」という気持ちの人は経理部門以外ではあまりいないのと同じで、こういう組織に属している人というのは、少なくとも平均以上には子供を好きな人々がいるもんだという思い込みが私にはあるんだけど、対応を見ていると、知識の面でも愛情の面でも、子供や問題のある親に対応する職業に適しているとは思えない。何度も通報があった家庭の子供が死んでいるというのに、事務的にお決まりの謝罪の言葉だけを述べる児童相談所の人々の記者会見を見ると、肝心の子供を救えないんだったら、始めからこんな機関は無い方が、周囲もあてにしない分いいとさえ思う。


新聞記事で読む限りだと、この母親は子供を置き去りにした1週間後くらいに一度アパートに戻っているそうなんだけど、その時はもう子供達は亡くなっていたけど放置してまたアパートを出たそうです。そして1ヶ月後に再びアパートに戻った時には、遺体は茶色く変色し、「腐っているようだった。」と母親は淡々と証言したそうなんだけど、この感覚がわからない。子供を放置するような親なら、遺体を見て「怖い。」「気持ち悪い。」という動揺がありそうなものだし、そこに遺体があると知っていながらアパートに戻るというのも理解できないし、逆に、育児に疲れただけで、本当は我が子に愛着があったのなら、我が子が無惨に変わり果てた姿を見て、激しい後悔や懺悔の念が湧いて来てもいいだろうに、そのどちらもなく、まるで古い衣服を見るかのような感覚。何か五感や情感の面が麻痺している人なんじゃないか。


よく、通り魔殺人や無差別殺人を犯した犯人が、裁判や供述などで、自分の親が自分に対して充分に愛情を注いでくれなかった事を犯行の理由として述べる場合がある。そういう時、テレビのコメンテーターは必ずと言って良い程、「もういい大人の年齢になって、いつまで親のせいにしているんだ。」といったようなコメントを述べるんだけど、あれは、公の場所で親を批判すると、その親から訴えられる可能性があるから弱腰になっているんだろうけど、そんな風に保身でしかコメントを言えないようなら、そんな人が“コメンテーター”として番組に出るなと言いたいし、もし局や番組側の意向ならば、最初からコメントさせない方がいい。(例外として、TBSの『ニュースキャスター 情報7Days』の斎藤孝さんは「ネグレクトや虐待は連鎖する。まず親のカウンセリングが必要。」と仰っていました。)


例えば、今回の大阪で置き去りにされた子供達が、運良くぎりぎりの所で助け出されていたとしても、愛情たっぷりにすくすくと育った子供と比べて、将来大人になった時に人格や行動に差が出るのは明らかだろう。恐らく、置き去りにした母も、こんなに感覚が鈍いのは、小さい頃に情緒が育っていないからだろうなと私は思う。


酷い親に育てられて、その子供が亡くなってしまえば「可哀想。」となるけど、生きて大きくなったら急に「自分の責任だ」と責めるのはあまりにも無知だし、視野が狭い考えだと思う。もし小さい頃に情緒や想像力が培われるような育てられ方をしていれば、人を無差別に傷つける前に「この人達(被害者)にも生活があるんだ」と想像できるし、「この人達は自分とは無関係だ」と気がつくだろう。それに何より、自分を大事に思えていれば、「死刑になっても構わない」とは思わないだろう。でも、親も子供が嫌いでそう育てたのではなく、育て方がわからなかったのかも知れない。その辺を考慮しないまま「いい歳をした大人なのに」という言葉で片付けられると、そこで思考停止に陥ってしまい、議論すらできなくなってしまう。


もちろん、犯行そのものは確実に本人だけの責任だし、いくら親の責任を訴えてみても、日本ではそれが判決に考慮された事は皆無ではないけれど、そんなには無いし、ましてや、子供の代わりに親が罪をかぶって刑務所に入ったり死刑になったりしたケースは無いと思う。それに何より、被害者や遺族からすれば、犯人がいくら「だって僕(私)の親が・・・」と訴えられても「知った事か!!」と思うだろう。


罪は本人で償うしかないからこそ、マスコミや周囲の人々は、今子育てをしている人や、これから子育てをする人に向けて、加害者の親についてインタビューしたり議論する必要があると思うんだけど・・・・・・日本は裁判に弱いから、そうはならないでしょうね。


加害者の親は、匿名でもいいから、ぜひ自分達の子育てを正直に公開して欲しい。それが、未来の加害者や被害者を生まない、一つの償いになると思う。