プロフェッショナル

スガシカオさんの歌が聴こえてきそうだ。


『コント会議』という、爆笑問題劇団ひとりバナナマンネプチューン雨上がり決死隊さまぁ〜ずジャリズム(小林しげのり・世界のナベアツ)、ビビる大木、ココリコ、ガレッジセール、これで全部かな?って思い出せないくらい沢山の、しかも名前は豪華な人たちが集まって作ったコント番組を見ました。


とても楽しみにしていたんだけど、そのせいなのか、全っ然面白くなかった。やってる本人たちは楽しそうだけど、ただ仲間内でふざけあってるだけみたい。この人たち本当にプロかしら?笑いに自信があると思ってる大学生たちが集まって作ったみたい。いや、学生の方がもうちょっと必死になって作ってくるだろうから、そちらの方が面白いと思う。そう思わせるくらい酷い。自分達が無名で、これからキャリアを積んでいくという時期だったとしても、昨日の番組を自分を評価してもらうための材料として世の中に発表するんだろうか?どうせならこの中では若手の劇団ひとりさんのネタを見たかった。中堅やばいよ。


皮肉にも、27時間テレビ明石家さんまさんとか、ビートたけしさんとかタモリさんとか、今年は一世代前のお笑いの人たちの活躍が目立っている。そして勝手に活動を活発化させているだけでなく、たけしさんに関しては純粋に面白い!と笑ってしまうし、さんまさんにはお笑いに対する情熱みたいなものを再認識させてもらったし、タモリさんには言葉を扱う人のプロ魂を見せてもらった。タモリさんの場合は悲しいけど芸というよりは赤塚不二夫さんの葬儀での弔辞で、なんだけど、あれだけの無駄がない言葉を、詰まる事なくアドリブで言い切るなんて、タモリさんは昔から大好きだったけど、そんな私も驚く才能だった。タモリさんの追悼文が載っている文藝春秋買っちゃったもん。


明石家さんまさんに関して言えば、私は27時間テレビの前まではあまり好きではなかった。なんか若手に対して押し付けがましいし、その割りに面白くない。(私の目には。)でも“嫌いだ”とまで思わなかったのは、陰ではチャリティイベントとかに参加していたり、お金にならない仕事でも引き受けたり、友人である嘉門達夫のために、彼がアルバムかなにかの発売イベントでデパートで営業をした時に掛け付けたり、毒舌は言うけど、島田紳助のように面白くないけど可愛い自分好みのタレントを番組内であからさまに贔屓せず、プロの舞台に上がった以上は面白さを追求するところとか、なんか人間的にはかっこいいよなぁと思っていたから。


27時間テレビでは、ヘキサゴンのところと、深夜にたけしさんと共演したところと、タモリさんと共演した笑っていいとものところと、エンディングの部分などを狙って見た。それまで正直「さんまの笑いはもう過去のものだ」と思っていたんだけど、私が見たどの場面でもさんまさんはテンポもよく面白かったし手を抜いていなかった。


そしてそのお笑い魂に感動すら覚えた場面がある。最後に三宅さんというプロデューサーが懺悔室に入れられ、さんまさんが急遽神父の役をしたんだけど、そのセットに入る直前にさんまさんは自分のピンマイクをスタッフに外させていた。つまり、三宅さんに水を掛けさせるつもりが、自分に掛かってしまうというハプニングを期待したと思うんだと思うのです。でも懺悔では、スタッフが気を使ったのか、三宅さんにしか水は掛からなかった。その時に一瞬さんまさんの顔がアップになったのですが、それが落胆の表情に私には見えたのです。「何で俺にかけへんねん」みたいな。(関西弁の使い方が間違っていたらすいません)


その顔を見た時に、まだまださんまさんに敵う若手は出てきていないなーと痛感したのです。だって若手の人って、「むちゃぶりだ」とか「急にふられても何も出ないよ!」とか言い訳ばっかりで、こんな風に貪欲に自分の身を犠牲にして笑わせようとする人は少ない。その前に出ていたタモリさんやたけしさんも凄く面白かったし、三宅さんの定年退職に伴い、ついでに笑いも世代交代かと思いきや、彼らがまだまだやれる事を証明してしまった気がします。この他に面白いと思ったのは今田耕司さんくらい。


昨日のコント番組に出ていた人の中でも、さまぁ〜ずとかネプチューンとか雨上がり、バナナマン、ココリコなどは世代的には中間というか中堅に当たると思うんだけど、上3人(さんまさん・たけしさん・タモリさん)がいつまでも引退とかしなければ、彼らはこのまま追い抜く事はできないと思いました。さらに、いつか上3人がいなくなり、やっと自分の時代だと思った時には、もう劇団ひとりとか友近とかチュートリアルの徳井とかブラマヨとか大島美幸などの下の世代に抜かれていると思う。それは時代のせいとか真ん中に挟まれたというタイミングのせいではない。「この人たちはタダ者じゃない」的な脅威みたいなものを全く感じさせない。かつては可愛かったのに今は太ってしまったグラビアアイドルみたい。


映画や舞台は自分で選んで観るものだけど、テレビは見るつもりがなくても目にする人が多い。その中には秋葉原で通り魔事件を起こした男みたいな荒んだ心の人間もいるかも知れない。そういう人間が、日雇いや派遣の仕事を終えて帰宅した後、テレビを見て思わずぷっと笑ってしまう事で心がほぐれ、何となくその日の怒りがリセットされ、人殺しまではせずに済むかも知れないし、その逆に、「なんだこんなふざけた番組やりやがって。これで俺の給料の何倍も貰えるなんてやってられねぇ!」と怒りを倍増させるかも知れない。その事に関して責任を取れというのではなく、笑いのプロとして、撮影するにあたってチラっとでも、テレビに出る事の大きさを意識してくれたらなぁ。


評価など関係なく仲間でワイワイやりたいのなら、電波に乗せないで本当にどこかの会議室でやってておくれ。他にも出番を待つ面白い人はいるだろうから。