2008フィギュアスケート・グランプリファイナル
今更ながら先週末のフィギュアスケート・グランプリファイナルの感想を一気に。
・男子結果
最終順位 | 選手名 | SP | FP | 総合点 |
1位 | ジェレミー・アボット(Jeremy ABBOTT/アメリカ) | 2位(78.26) | 1位(159.46) | (232.72) | 2位 | 小塚崇彦(日本) | 1位(83.90) | 3位(140.73) | (224.63) | 3位 | ジョニー・ウィア(Johnny WEIR/アメリカ) | 4位(72.50) | 2位(143.00) | (215.50) | 4位 | トマシュ・ベルネル(Tomas VERNER/チェコ) | 5位(69.34) | 4位(137.31) | (206.65) | 5位 | パトリック・チャン(Patrick CHAN/カナダ) | 6位(68.00) | 5位(137.16) | (205.16) | 6位 | ブライアン・ジュベール(Brian JOUBERT/フランス) | 3位(74.55) | (棄権) | (―) |
男子SPはファイナリストにも関わらず、放送は上位3人とシリーズ1位通過のパトリック・チャンだけ。ファイナル初出場の小塚選手が技術点で全ての要素でプラスを貰い1位。演技前の表情は緊張しているように見えたので心配だったけれど、演技が始まると動きも滑らかでスピードもあった気がします。2位のジェレミー・アボット選手は無難という印象でした。でもスケートが楽しそう。3位のブライアン・ジュベールはとにかく会場の黄色い声援が凄くて音楽がきこえずらい程。ただ、会場にマイクは一つだけじゃないだろうし、放送する時はその辺の音声出力レベルは調節できたんじゃないかなーと思いました。演技は、せっかく4回転+2回転のトウループが成功したのに3回転ルッツで失敗してしまった。筋肉がモリモリに見えるんだけど、その筋肉通りに力強いメリハリのあるステップでした。パトリック・チャンはシリーズの好調ぶりが嘘のように、疲れも見えてかなり痛々しい演技。低い点数だったけど本人も納得の表情でした。
FPは、ブライアン・ジュベール選手がまさかの棄権。パトリック・チャン選手は今日もジャンプのミスを修正できず最下位のまま。トマシュ・ベルネル選手は最初の4回転トウループは成功させたけれど、その他のジャンプでは跳んだ直後にフワっとなってしまい1回転ジャンプになってしまうミスが2回あったし、スピードもキレもいつもよりなかった。ジョニー・ウィア選手は4回転ジャンプには挑戦しなかったけれど、転倒など大きなミスはなくフリーでは順位を2位に上げた。余談ですが、ジョニー・ウィア選手は日本で試合を行う時のKiss&cryでは「アイシテマス」「ドウモアリガトウゴザイマシタ」と画面に向かってメッセージを送るんだけど、今回も「サランヘヨー」とか「カムサハムニダ」と現地の言葉で言っていましたね。律儀な人だ。ジェレミー・アボットは4回転ジャンプは無いけど、他の回転ジャンプを全て成功させ、最後までスピードも落ちる事なく、解説の佐野稔さんも言っていたけど「アボット選手の持っている力を全て出し切った。」という完璧な演技。ラストの小塚選手は、4回転に挑戦するも回転不足で減点。更に後半の3回転アクセルで転倒で大きく減点となり総合2位で終了。でも荒川静香さんが、SPが1位だったし点差もあるので、最終滑走のフリーでは守りの演技をしてしまいがちなのに、ここで4回転に挑戦したのは勇気のいる事だと翌日の放送で解説していました。それを横で聞いていた小塚選手は「ここで挑戦しないと負けると思ったので。でも結局負けたんですけど。」と言っていました。
・女子結果
最終順位 | 選手名 | SP | FP | 総合点 |
1位 | 浅田真央(日本) | 2位(65.38) | 1位(123.17) | (188.55) | 2位 | キム・ヨナ(Yu-Na KIM/韓国) | 1位(65.94) | 2位(120.41) | (186.35) | 3位 | カロリーナ・コストナー(Carolina KOSTNER/イタリア) | 4位(55.88) | 4位(112.13) | (168.01) | 4位 | ジョアニー・ロシェット(Joannie ROCHETTE/カナダ) | 6位(50.48) | 3位(115.88) | (166.36) | 5位 | 中野友加里(日本) | 3位(62.08) | 6位(99.85) | (161.93) | 6位 | 安藤美姫(日本) | 5位(55.44) | 5位(102.81) | (158.25) |
女子SPは浅田真央選手以外はどこかしらにミスがあった。男子も含めて、今回のファイナルは目の覚めるような会心の演技、というのは見られなかった気がします。キム・ヨナ選手は回転はフワッとなってしまう1回転ルッツがあったものの、最初の3回転フリップ+3回転トウループでプラスを貰い、11.50という大きな得点になる。一方でノーミスだった浅田真央選手だが、同じく序盤の3回転+3回転でマイナスされて5.20しか貰えず、キム・ヨナが1位。最近のジャジは厳しくなったそうだけど、そのせいなのか浅田真央選手はジャンプの判定で減点される事が多いので、一見良くできた演技でも点数が伸びない事が増えた気がします。シリーズで調子の良かったジョアニー・ロシェットだけど、転倒してしまい最下位。女子の場合SPでの転倒は厳しい。
FPでは、安藤美姫選手が中野選手と曲が重なってしまったので直前に変更したらしい。そんな安藤選手は演技終了後に謎のガッツポーズをし、解説の伊藤みどりさんや実況の人がザワザワ・・・何故?という感じで一瞬戸惑った様子だったけど、「もしかして4回転に挑戦してたのかな?」という結論で落ち着いた。回転不足だったけど、4回転サルコウを跳んだという認定はされていました。憶測だけど、このガッツポーズはニコライ・モロゾフコーチの指示かもなぁと思いました。「4回転に挑戦したという事をジャッジにアピールせよ!」と。他の選手にプレッシャーをかけるために「4回転跳びます」と試合前に宣言して跳ばなかったり、どうもモロゾフコーチは演技以外の戦略が多い気がする。全て憶測ですが。中野友加里選手も転倒こそ無かったけれど、3回転アクセルなどのジャンプが回転不足だったり着地が乱れたりして減点されてフリーでは6位。ジョアニー・ロシェットは前日からは調子を取り戻し、フリーでは3位につけたけれど、やはりSPの点数が響いて追い上げならず総合4位。カロリーナ・コストナーは1度転倒があったりしてFPは4位だったけれど総合で3位。浅田真央選手はやっと3回転アクセルを2回成功したと認定され逆転優勝。キム・ヨナは前日と同じフワっとしてしまう回転ジャンプに加え、転倒までしてしまいさすがに逃げ切る事はできなかった。ただ、キム・ヨナ選手は浅田真央選手に比べて回転ジャンプの評価がとても高いので、浅田真央選手が3回転アクセルを2度決めても、キム・ヨナ選手にとってさほど脅威にならない事がわかりました。私は浅田真央選手のFPのストレートラインステップは圧巻で、相当な技術力を要すると思うのですが、ジャッジの目では、それでもキム・ヨナの方が総合的なスケートの技術力が上と判定しているようです。確かに、表現力や振り付けや演出なども含めて演技に見入ってしまうのはキム・ヨナ選手の方だけど。運動として見た場合浅田真央選手の方が優れているけれど、舞(まい)というか、芸術として見た場合キム選手の方が上という事なのかな。氷の上でスケート靴を履き、見事に舞って見せる技術は確かに相当なものだ。その辺を、松岡修三さんの口を塞いで荒川静香さんや伊藤みどりさんや佐野稔さんなどにわかりやすく解説して頂きたいです。
・エキシビジョン
『篤姫』を録画しながら見たこの放送。退屈だったら篤姫の方見ちゃおーと思っていたんだけど、どの選手も惹きつける演出&演技だったし、ところどころ過去の名場面を流してくれたりして結局最後まで見ました。安藤美姫のMickyは可愛いかったですねー。なんか本人もあの頃が一番生き生きとスケートを楽しんでいたような気がする。
キャンデロロの、アメリカ国旗をまとって登場した演技は覚えています。まだ子供でオリンピックがどんなものかもよくわかっていなかったし、フィギュアスケートもよくわからなかったので、これが競技なのかと思い(その前の競技を見ずにいきなりエキシビジョンだけを見たので)フィギュアとはこんなに楽しいものなのかと目を輝かせて画面を見ていました。その後、張り切ってフィギュアの競技を見るようになったんだけど、もちろん試合なのであのお祭り騒ぎは無く、理解するまでしばらくは見る度にガッカリしていました。そんな思い出話でお茶を濁しつつ。
今回の放送の中では、私はカナダのジョアニー・ロシェットの007の演技が好きでした。チェコのトマシュ・ベルネルは毎回毎回お客さんが盛り上がる楽しい演技を見せてくれますね。
別の現地スタジオでは松岡修三さんと荒川静香さんと、韓国という事で草剪剛さんが参加したのですが、ありきたりの質問ばかりでぐったり。しかも松岡修三さんは、多分わざと演出でそうしているんだけど、感動や興奮を言葉や態度で現そうとするから、やたらと騒がしい空気が漂いました。熱いのは好きですが、もう試合が終わって一日経っているんだし、しかも演技直後でなく着席しているんだし、視聴者のテンションも考慮して欲しかった。
そしてこれはテレビ朝日だけでなく、そしてフィギュアに限らず全ての人気先行のスポーツ中継に共通する事なのですが、選手へのインタビューではレポーターの質問が抽象的すぎ。これはタレントだけでなくアナウンサーにも言える事。さらに、今回だったら浅田真央選手がトリプルアクセルを2回飛ぶとか、安藤美姫選手の4回転とか、以前だったら荒川静香さんのイナバウアーとか、ナントカの一つ覚えみたいに、同じ技にばかり固執しすぎです。全体的に番組が子供向けみたいに稚拙なんですよね。
ゴルフの中継では、専門家があそこのホールでドライブがどーのこーのとか具体的に選手に質問するのに、人気先行のスポーツでは少しでも知名度を上げたい無能なタレントが首を突っ込むもんだから、気持ちだとかそんな事しか聞けない。今回だって、もうちょっと松岡さんは荒川静香さんに任せて欲しかった。ある程度専門的でも、見ている人はその競技を好きで見ているんだから、知らなかったら勉強するだろうし、テレビが視聴者のレベルを引き上げるくらいの事をしても大丈夫だと思う。そうやって専門的な見方をするファンを増やしていけば、選手をアイドルと勘違いしているようなミーハーな人気だけで終わらず、競技そのもののファンというのも増えていくんじゃないかと思うのですが。