テレビはわかりやすいだけに怖い

昨夜、TBSの『テレビってやつは!?』に竹中平蔵が出ていた。


最近この番組から遠ざかっていて、久々に見てみたんだけど、つくずくこの番組は『TVタックル』のように政治を語りたい番組ではなくて、監修・秋元康の名でもわかるように、あくまで視聴率を稼ぎたい番組なんだなーと思いました。あ、こんな事書いたら私も訴えられてしまうのかな?最近、出版界だけでなくネットの世界にも言論統制化が進んでいますよね。自社の本を売るためにガセでもおかまいなしに過激な記事を載せたりとか、さえない私生活の憂さを晴らすために正義を名目に人のブログに中傷を書き込むような自己中心的な人たちのせいで、それを盾に本当に重要な事を告発したい人まで規制されてしまうのは社会にとっても大きな損失なのに。


番組の話に戻りますが、最初に書いたように、これは竹中平蔵の真実を暴く番組ではなく、竹中平蔵が出演許可を出してくれるような舞台作りをしてあるので、他のゲストも経済の専門家は、家庭に役立つ経済が得意で政治方面に長けている印象は薄い荻原博子さんだけ。ちなみにこの日の他の出演者はビビる大木さんと室井佑月さんと八木亜希子さん。レギュラーのようにこの番組に出ていた森永卓郎さんはVTRのみの出演だし、囁きながらも鋭いコメントをする姜尚中先生もいない。


そんな中、もちろん竹中さんは意気揚揚と自論を展開して荻原さんやゲストの室井佑月さんを論破していったんだけど、テレビって怖いなーと思ったのは、人の間違いを神経質かつヒステリックな仕草で指摘する竹中さんの姿を見て、ますますこの人に対する嫌悪感が増したという事。意見がどうとか言う前に、まず生物の勘としてそれが第一印象として飛び込んできた。竹中氏に言いくるめられた室井さんが、それでも諦め切れなくて「でも絶対間違ってると思うんだよ。(他のゲストを見て)何かない?!」と助けを求めるように言っていたのがその象徴で、言葉だけ受け取ると正論かも知れないけど、でも何かが引っかかる、という気持ち悪さがずっと消えませんでした。証拠は無いが男の浮気を見破る女の勘、みたいな感じ。


これは議論を優位に進めたがる人がよく使う手だけど、竹中さんは最初に他の出演者に対して「みなさん、労働者の中で派遣の割合って何%くらいだと思いますか?」と、どう考えたってビビる大木さんや室井さんがそんな具体的な数字を知ってるはずないのに(失礼)質問し、相手の口を封じてから、「派遣は全体の2.6%なんですよ。(中略)分からないでみんなコメントしているんですよ。」と威嚇のように言う。いやいや、2.6%だとか、あえて派遣の人だけとかそういう小さく見える数字を持ち出すそのすり替えやめてよ。でもこの質問で、無知を晒して恥を書きたくないビビる大木さんや久米宏さんを議論(討論)から外す事に成功。


その後も、VTRで森永卓郎さんが「構造改革が足りないから、今の不況があるとよくおっしゃってますけれども、ここでさらにあなたの言う弱肉強食政策を進めたら、どういうメカニズムで今苦しんでいる人たちが救われるんですか?」と質問したのに、「市場原理主義とか弱肉強食とか、それは現実とはまったく違う。市場原理主義で全部規制緩和したみたいにVTRの人は言ってますけど、それは事実とは違う。やっぱり事実に基づかないで議論したらダメですよ」とか、この他の質問に対しても質問には答えずに言葉尻を細かく否定して、論点を誤魔化しているような行為が目立った。


質問者が(この場合森永卓郎さん)竹中さんがこういう風に質問をかわす人なんだと知っているのなら、余計な挑発をせず、弱肉強食・市場原理主義などの言葉を使わず質問するべきだった。そしてあの場では、司会者の久米宏さんが竹中さんに対して「じゃあ市場原理主義という言い方は間違っているとして、森永さんの質問にはどうお答えになりますか?」って食い下がって聞いて欲しかった。


あとこれは痛恨のミスだなと思ったけど、かんぽの宿入札の話で荻原さんが「経済財政諮問会議の中心メンバーだった宮内さん」と言ってしまい、竹中さんに「宮内さんは経済財政諮問会議のメンバーではありません。間違ってるじゃないですか。そんな間違った事を言ってはいけませんよ。」と指摘され、すぐに「ごめんなさい、規制会議の(メンバー)。」と言い直したんだけど、もう目に見えて竹中さんは攻めモードで、やっちまったと自覚のある荻原さんは逆に焦ってしまったように見えた。でも、例えば「盗撮が趣味の宮内さん」とか「昔赤軍派にいた宮内さん」とか、言い間違えたのが悪い印象のものだったらそこまで攻められても仕方ないけど、経済財政諮問会議って政府のお仕事じゃん。すぐに言い直したのにも関わらず、そんなにヒステリックに何度も「間違ってるじゃないですか。」と攻めるのも何か変だね。「違うよ」で済む話だ。


さらに「規制会議の〜」と言い直した荻原さんに対しヒートアップしている竹中さんは「規制会議と郵政民営化とは何の関係もないじゃないですか!」と言っていたんだけど、この意見に関しては数日前に鳩山議員が会見で事実ではないと指摘していました。


以下、総務省のHPより引用
http://www.soumu.go.jp/menu_01/kaiken/back_01/d-news/2009/0120.html
竹中氏はですね、「郵政民営化のプロセスに規制改革会議が関係したことはない。」と言い切っておられますが、それは確かに答申のようなものは出ていないかもしれませんが、規制改革会議の前身である、総合規制改革会議において、平成15年10月7日に、郵政民営化の問題は経済財政諮問会議に一本化されるようになりましたが、それまでは郵政民営化の議論は、宮内さんが、これは議長を務めておられる総合規制改革会議において、議論されておられました。その事実は、無視してほしくない。まるで宮内さんが郵政民営化の議論に全くノータッチだったようなことを平気で論文に書かれては、困るのでございます。平成15年10月7日に、当時の金子規制改革担当大臣の方から、郵政民営化は、総合規制改革会議ではなくて、経済財政諮問会議で扱うというふうな話があった時に、宮内議長は、当会議と経済財政諮問会議とは、引き続きできる限り連携を保っていくことを考えていると。だから、経済財政諮問会議から郵政民営化の問題についていろいろな検討依頼がされることも想定できるのではないかというようなことで、郵政民営化に対する熱意を見せておられます。上げ足を取るようなことは私はしたくないですが、まるで、総合規制改革会議というところが、郵政民営化の議論にノータッチだったように新聞に書かれますと、国民が間違いますのでね。


でも残念ながら番組内ではこの事はスルーされ、あくまで竹中さんの「宮内さんは郵政民営化に関しては何の関与もない人なのに、たまたま政府の仕事に関わったために談合と言われるのか?」という間違った前提のまま話は進められた。だから竹中さんによれば、「規制(改革)会議と郵政民営化と何の関係もないじゃないですか。もしそんなことを言ったら、例えば、今後郵政民営化して株を売り出すでしょ。前会長のトヨタの奥田さんは諮問会議のメンバーだったんですよね。トヨタは株を買っちゃいけないんですか?そんなことを言ったら民間人が政府の仕事なんかやらなくなりますよ、誰も。」という事になるらしい。株の購入法と施設の入札はシステムからして違うじゃーん!


相手を舐めてかかっているから結構こじつけのような言葉も出ている竹中さんだったんだけど、冒頭に自分が「派遣社員は労働者全体の2.6%。」と自ら数字を強調して持ち出していたのに、このかんぽの宿の話題では「数字にだけ感情的に反発するのは間違っている。」と都合のよい発言をしていました。


他にももっと沢山取り上げたい箇所があるんだけど、これはちゃんと発言しなければならない場ではなく、テレビの中のひとコマに過ぎないのでこの辺で止めます。室井さんは相手より知識がないと承知の上でも何度もぶつかっていき、たくましかったです。こういう人が知識を得たら竹中さんでも敵わないでしょう。荻原博子さんも、押された所もあったけど、でも冷静に指摘すべき所は指摘していたような気がします。特に、番組の作ったVTRで「働く場所がないと嘆きながら、いざ募集があっても集まらなかったり、仕事を選んでいる人たちがいる。」というものが流れた後の、
「誇りが持てるような働き方ができないといけない。さっきこんなに求人があるのに選んでるって言いましたけど、介護とかそういう分野はあるんですよ。でも、介護の仕事をしている人たちの手取りが15万円で、それで4人家族が食べていかれるのかっていったらやっぱり派遣の人だって二の足を踏む人が多いと思う。それを単なるミスマッチとか言わないで、誇りのある生活ができるような、働き場所をちゃんと政府なり何なりがみてあげる。そういうことがなければ寂しい人生になる。人間は食べるだけでカツカツになっちゃうと誇りが持てなくなっちゃうんですよ。」
という発言は、まさに弱者の視点を持った人だなと。


今年中には確実に選挙があるわけなんだけど、それを踏まえて、麻生首相の漢字読み間違いを笑う前に、麻生氏を議員にしてしまった選挙区民をもっと非難しないとダメだと思う。「こんな奴を国会に送り込むなんて、1票投じた奴はどこに目をつけていたんだ!」と。もちろん選挙にすらいかなかった奴も、対抗馬に投票して阻止しなかったという点で同罪だと思う。久米さんも「ここで竹中さんのやったことは間違いだろ、というのはほとんど意味がない。これは何故かというと、小泉さんも竹中さんも国民が大いに支持したわけですから。」と番組内で言っていた。ぜひ有意義な一票にしたいものです。