下劣コップの戯言

うぬぼれ刑事』最終回。


バカ最高!くだらない事大好きー!
そう叫びたくなるような最終回でした。
ドラマとは関係ないけど、銀行強盗の犯人達のアジトになっていた家ってよくドラマに登場しますよね。


長瀬智也さんの大活躍については逐一書いていたらキリがなくなるので、ここでまとめて「長瀬さんなしではうぬぼれ刑事はありえなかった。」と述べておきます。


結局うぬぼれは中島美嘉さん演じる里恵に戻ったんですね。最終回に本名が判明したけれど、西田敏行さん演じる父が既に「己(おのれ)」と本名で読んでいるのに、うぬぼれ本人が「うぬぼれです」と訂正していて、もうこの人はうぬぼれになりきっているんだなと思ったし、そもそも己をうぬぼれな性格に変えたのは里恵なので、お互い治まる所に治まったなぁという感じ。


バー『I am I』って長瀬さんの台詞「俺はぁ、俺だからぁ。」から来てるのか?と思ったけど、うぬぼれの名前が己なら「俺は己」にもなるな。凄いね、クドカンさん。


前半に「♪いちば〜ん綺麗な私を〜」の曲に載せて、恋の終わりと始まりが描かれていたけれど、恋の始まり(長瀬さんと女形中村七之助さん)では美しい幻想的な演出なのに笑いがあり、恋の終わり(荒川良々さんと中島美嘉さん)では太陽が照り子供達の集う明るい公園が舞台なのに泣かされた。(私が)


私はうぬぼれ刑事よりも荒川さん演じる冴木さんの方が好きなので、里恵さんにはできる事なら冴木さんと別れて欲しくなかった。


深刻な話をしている最中に子供達を集めて公園でショーをしているバルーンパフォーマーのお兄さんに呼ばれた冴木さんだけど、里恵をその場に残していくのが気がかり。お兄さんに風船を膨らますよう頼まれるけど、里恵が気になってそれどころではない。


風船をくわえたまま、お兄さんたちに背を向け、離れた場所に立っている里恵を見つめる冴木さんだったけど、お兄さんに再び風船を膨らますよう促され、我に返ったように「すいません」と言い里恵に背を向け風船を膨らませようとする。


それを見ている私は「ああ!目を話したら(里恵が)逃げちゃうよ!」と「シムラー後ろー!」状態でハラハラと見ていたら、案の定里恵はその場から駆け出して逃げてしまった。「あー!冴木さん早く気がついてぇ!」そう心で叫ぶ私だけど、冴木さんは振り返る事なく必死で風船を膨らまそうとしていた。嗚咽しながら。


冴木さんはすでに里恵がその場にいない事を知っていた。この場面すごく泣けました。


一方のうぬぼれ&女形はいつの間にかうぬぼれも衣装を着て舞台に上がり踊っていた。(もちろん恋をしたうぬぼれの妄想)最後には手錠に見立てた手ぬぐいで互いの手首を絡め、逮捕を暗示させていた。宮藤官九郎さんは隙が無いね。それにしても中村七之助さんの女形は綺麗だったし現代劇も上手だった。「姉ちゃんが俺の神だ。神のみぞ知るだ。」という台詞も、下手な人が言うと居たたまれない程クサイ台詞になってしまう気がするけど、七之助さんは全然そんな事は無かった。


西田敏行さん演じるうぬぼれの父が実家に帰る事になり、最後に真面目な話をする場面で、

「お前は(犯人を)許す。そして本気で愛する。まぁ結果はどうあれ、悪い気はしないと思うよ。人生捨てたもんじゃねえぞって、思うよ。」

という台詞があったけど、あの最後の「思うよ。」の前に一瞬生まれた間は偶然の息継ぎなんだろうか?あの間がある事で、元々良かったあの台詞にさらに個性が加わって味わい深いものになった。例えるなら『二代目はクリスチャン』の中での北大路欣也さんの

「刀は四人も斬ったら血のりがついて切れなくなります。突くようにするか、喉をかっ切るように、しなさい。」

という台詞の言い方みたい。あの台詞も最後の「しなさい」の前に息継ぎが入った事で、すごく印象深い台詞になって未だにあの台詞だけは覚えている。


今回はうぬぼれ5+バーテンのゴローも大活躍。中でもサダメはお手柄だった。サダメが国定忠次の芝居の稽古で「赤城の山も今宵限り」と言う台詞が全然言えなくて、「赤木春恵!」とか言うんだけど、赤木春恵さんという大ベテラン女優の名前がすんなり出てくるくらいなら、赤城の山も〜の一節くらい言えるだろうと思ったけど、サダメはオバアちゃん子だと以前言っていたから、きっとオバアちゃんと一緒に『渡る世間は鬼ばかり』とか見ていたのかなと勝手に推測してみた。


余談ですが、甲高い声で「神輿神輿」と盛り上がるゴロー演じる少路勇介さんの声の幅広さに驚きました。どうかこの人がもっと活躍できる実力重視の芸能界になりますように。


里恵が銀行強盗の主犯=神だと知った冴木さんがまさかの「なんでかフラメンコ」。見ているこっちが「なんでか」だった。ちょっと!ギター持ってきて!


最終回の中で残念な点は銀行内部の描き方がゆるすぎた事。こういうコメディドラマだから別にいいんだけど、他が面白かったから余計に目立ってしまった。


里恵が連行される車の中でうぬぼれに向かって「会津磐梯山より愛してる」と言った時、初回を思い出して胸が熱くなった。あれは、まだ里恵と交際していた頃、嫉妬深くて自分をどのくらい愛しているか何度も聞いてくる里恵にうぬぼれが言った言葉。そもそものあの言葉は、「どのくらい愛しているか」の答えにネタ切れしたうぬぼれが父にメールして教えてもらった言葉だったんだけど。


でもクドカンさんはその台詞を愛の言葉だけに終わらせず、お金の隠し場所を表すヒントになっていた。深読みすれば「お金より愛してる」って意味もある。すごいね。でも、お金が埋まっていたあの山は会津磐梯山というよりは田んぼ近くの裏山という感じだけど、会津磐梯山だった事にしたい。


クドカンさんはいつもひょうひょうとした様子を見せているけれど、これだけの脚本を書くのは相当大変な作業だったと思う。おかげでこちらはとても楽しませて頂きました。終わって欲しくないよう。