手錠は突然に

フジテレビのドラマ『美しい隣人』は怖くて面白い。こわおもしろい。


SEX AND THE CITY』の日本版という感じで女同士の会話を書いた脚本が凄くリアル。壇れいさん演じる、夫に浮気された友人を心配している風で、実は好奇心からその話を詳しく聞きたいだけの三浦理恵子さんの役柄とか特に。こういう人に出会った事のある女性は多そう。


本題。
市川海老蔵を殴った人の裁判では加害者(被告か)側の言い分も詳しく報じている番組もあったのに、なぜ今政界でその立場が注目されている小沢一郎氏の秘書ら3人(大久保隆規石川知裕/池田光智)の公判での弁護側の主張をちゃんと報じないのだろう?かなり衝撃的なものもあったのに。


・取り調べ中にフロッピー検事が謎の号泣
大久保氏を取り調べしたのは、後に証拠品として押収したフロッピーディスクの日付けを改ざんして逮捕された前田元検事だったんだけど、大久保氏の取り調べでも問題のある取り調べ方法が多くて、書記官を同席させず一人で取り調べを行う事もあったらしい。これは取り調べられる側にしたら本当に恐怖だと思う。日本の法律は知らないが、アメリカならこういう方法で得た供述は証拠採用すらされない。


その他にも前田元検事は時には号泣し、時には「石川さんはオヤジ(小沢一郎)を助けるためにしゃべり始めている。あなたが話さなければ石川さんも池田さんも困る。池田さんが釈放されるよう大久保さんも認めてください」と供述を誘導したとされている。


・女性秘書を嘘で呼び出し10時間拘束
これは知っている人はとっくに知っている話だろうけど、石川議員の女性秘書が検察から「押収品の返却があるので取りに来て欲しい」と検察庁に呼び出されたのに、そのまま被疑者として拘束されてしまった。


携帯電話も許されず、弁護士も呼べず、保育園に預けていた2人の子供に連絡する事すらできないまま、夜の11時までおよそ10時間、検事から「お前」呼ばわりされ、小沢一郎と石川議員が共謀して虚偽記載した事を認めろと言われ続けた。その他にも検事から
「あなたの子どもは保育園でどうなるんだろうね」
「早く帰りたいなら、早く認めて楽になれよ」
などと言われ、取り調べの間、椅子の背もたれに寄りかかる事すら許されなかったらしい。この女性秘書はその後精神的ショックからしばらく仕事にも行けず、耳が聞こえなくなってしまった。しかも、呼び出された理由である押収品の返却はされなかった。


この女性秘書に対する取り調べ一つ見ても、検察側のやり方がおかしいと思うんだけど、何故だか大手マスコミは全く取り上げない。旬な話題だから何度も例に出してしまうけれど、市川海老蔵を殴った相手に関しては、市川海老蔵が否定しているにも関わらず、加害者側の主張も放送し、市川海老蔵に非があるかのような報道をしている。仮に女性秘書の言い分を検察側が否定しているのだとしても、マスコミは海老蔵事件の時のように、双方の言い分を報道すればいいだけの事だ。


私は小沢一郎氏が有罪なのか無罪なのかはわからないし、その事自体には大して興味は無い。小沢一郎氏の事もあまり好きではないし。


でも今回の検察のような嘘のやり方で人を陥れるのは、相手が誰であれ間違っていると思うし、それを知っていながら報じず、大した検証もなく視聴者に洗脳のように「政治とカネ」のキーワードを連呼し植え付けているマスコミにも不信感を覚える。せっかく「政治とカネ」のフレーズが正しいのかどうかを証明できる今回の公判があったのにその詳細を報じないという事は、マスコミは小沢一郎が罪を犯したのかどうかには関心がなく、ただこの人が邪魔な存在だから政界から追い出したかったんじゃないか。


マスコミは、警察や検察が疑っているだけの状態でも、わざと見ている人に悪い印象を抱かせるような報じ方をする場合が多々ある。私が記憶している中で最も酷い報じられ方をしたのが松本サリン事件の時の河野さんだけど、マスコミはこの事を全く反省していないとしか思えない。松本サリン事件の被害者でもあった一般人を長期に渡って傷つけるというあの大誤報を経験したのにも関わらず、再び意識的にこういうインチキな仕事をしている人達に、相撲の八百長を責める資格なんてあるのか。


冤罪というのは「犯罪を犯していない人」にかかる罪だ。という事は罪を犯していない全ての人が冤罪にかかる可能性がある。


なのになんで、冤罪にあった人々の報道を見てもみんながどこか上目線で「可哀想に」などと他人事のように済ませられるのかが不思議でならない。別に暴動とかデモを起こせというのではなく、もっと個人の意識の中に「自分がこんな目に遭ったらどうしてくれよう」という恐怖とか怒りが湧いて来ても良さそうなものなのに、取り調べの可視化論とか全然盛り上がらない。


足利事件の冤罪被害者の菅家さんは、元同僚の結婚式に出席しようとしていた当日に自宅に刑事達がやってきて逮捕されてしまった。きっと冠婚葬祭用のスーツとか御祝儀とか用意していたはずなのに、不参加の連絡すら入れさせてもらえない状態だったらしい。その日から釈放まで18年ですよ。


こんな風に冤罪は、平凡な日常に突然土足で襲ってくる。もしかしたらアナタやアナタの家族が同じ目に遭っていたかも知れないんですよと訴えたいし、アナタが「犯人だ」と思い込んでいるその結論は、どこで誰から得た情報によるものだったのかと再検証して欲しいし、別の角度からもう一度見直してみて欲しい。