ブレまくり

 ここ数年の政治に対する有権者の態度を見ていると、とても違和感を感じる。テレビや新聞などが政治家(総理や与党)の事を批判的に報じ始めると、何を批判されているのか、実際はどうなのかを自分であまり確認せずに一緒になって「全く政治家はどうしようもない!」と強く怒ったりする。そのくせ、次に選挙があった時に「もうあんなのは選ぶまい。しっかり選ぶぞ。」と反省して候補者についてよく調べて票を入れるのではなく、「どうせ誰が選ばれても同じ。」とどこかで聞いたような台詞を言い、これまた報道を鵜呑みに適当に選んだり、投票すら行かない人がいる。


 私から言わせれば、こういう姿勢で選んでいるから、政治がこんなに乱れてるんだと思う。「誰でもいい」という気持ちで選挙を考えているから、「どうでもいい」ような政治家が誕生してしまうんだ。震災の後「国民は立派だけど政治家が駄目。」なんて一部の海外メディアが報じてくれたらしいけど、そうではなくて、やっぱり政治家はその国の国民を反映してるんですよ。

 
 本題。
 この日記で何度か書いたかも知れないけれど、私は民主党に特に期待もしていなかったし、政権交代が起きた選挙の時も民主党には投票しなかった。(福田康夫さんが総理になった時には一瞬期待しました。あっという間に終わったけれど…。)


 だからこそ政権交代が起きてからの報道をちょっと冷めた目で見続けてきたのだけれど、そういう私からすれば、安倍晋三よりも麻生太郎よりも鳩山由紀夫よりも菅直人よりも、何より一番ブレているのは大手マスコミ(新聞・テレビ)だなと思う。


 2010年4月に行われた菅直人小沢一郎による民主党代表選でも、マスコミは対抗馬の小沢一郎を“政治とカネ”のワードで叩きまくり、反対に菅直人に関しては市川房枝さんと映った映像を何度も放送し、いかにも市民の気持ちがわかる人のように褒めていた。同じ人物の同じ過去なのに今では「しょせん市民活動家上がり」と小馬鹿にしたような言い方をされるのに。代表選の前は女性コメンテーターの何人かは「小沢さんは顔が怖いけど菅さんはイケメンだから菅さんの方がいい。」なんて恥ずかしげもなく言っていた。まるで学校の級長を決めているかのような軽さ。野党時代に言われていた「菅直人の二枚舌」なんて言葉は消えてなくなってしまったかのようだった。


 先日の内閣不信任決議案が否決される直前に行われた民主党代議士会での菅直人の『退陣表明』にしても、私はニュース番組で「菅直人総理が内閣不信任決議直前の代議士会で退陣表明し、それを確認した鳩山由紀夫グループが不信任決議案には反対を投じた。でも菅直人は辞めるつもりはなく、騙された鳩山由紀夫氏が菅氏をペテン師よばわり」と報じられているのを見て、てっきり菅さんが辞任発言をしたのにも関わらずそれを裏切ったのかとばかり思っていたけれど、後になってネットでその時の菅さんの発言全文を読み直してみると、辞めるという直接表現はおろか、むしろ当分はやる気満々なんじゃないかとすら思える内容だった。「菅直人 代議士会 全文」等のワードで検索すると全文が出てきますので、スピーチの全内容を知らない方はぜひ読んでみて下さい。


 この代議士会の様子を生中継していた各テレビ局は、菅直人首相のスピーチが終わる前に大きな文字で『菅総理退陣表明』とテロップを入れたそうですが、それは予め「菅直人は辞任するらしいよ。」という情報を聞いていたからなんだろうけど、現実に起きた事と言えば、菅直人総理が「震災・原発事故の復興が終わるまでは頑張るぞ」と宣言したに過ぎない。つまり、生中継で『退陣表明』とテロップを入れたテレビ局は大誤報をしてしまったんだと思う。


 鳩山由紀夫氏と約束した云々の件は、政治、または人間同士の駆け引きであって、マスコミが「辞めると言っただろ!嘘つき!」と公に批判できる類のものではないと思うんだけど。だって、スケールは違うけど、友人同士でお金の貸し借りをしたとして、友人なんだから借用書なんて作らなくていいよね、と信用していたら、相手が「借りてないよ」と言い出した、という出来事だって、お金を貸した友人は「酷いよ!」と言う権利はあるけれど、何の証拠もない場合、真相を知らない第三者があれやこれやと言う権利は無く、下手にお金を借りたとされる側を攻撃(「あの人はお金を借りたのに知らばっくれているんですよ」と吹聴したり)した場合、逆に訴えられてしまうかもしれない。


 マスコミは自分が誤報した事を棚に上げて、いや、誤報を事実にしたいがために、意地になって「菅直人の退陣表明」を現実化させようとしているように見える。もしかしたら、「菅直人は鳩山・小沢陣営を騙すために辞任を臭わせるスピーチをする。後になって菅直人が引き返せないように、退陣のテロップを入れて既成事実を作ってしまおう。」と画策したのかも知れない。あー怖い怖い。


 これから注目していきたい大手マスコミの“ブレ”は原発
 口先だけで「福島から避難している人達が気の毒だ」なんて言っているけれど、実は大手マスコミは原発推進派。再稼働を止めた菅直人の事は未だに批判しているけれど、佐賀県知事九州電力幹部から個人献金を貰っていた事はテレビで報じない。


 安全性なんかより原発再稼働プッシュしまくりで、テリー伊藤を始めとする媚びンテーター、じゃないやコメンテーターも「早く原発を再稼働させなきゃ」なんて言っているけれど、原発に夢を抱いているのはもうろく爺さんや交付金献金に狂って現実が見えてない人ばかりで、アメリカの経済界を見ても、早い人は「もう原発じゃない」と見切りをつけている人だって増えてきている。日本の経済界だって、若い人世代は脱原発を次々と表明している。


 脱原発の流れが主流になった時、大マスコミや、テレビカメラの前ではっきりと「早く再稼働させなきゃ」と言った風見鶏テリー伊藤のような人達が、どう態度を変えていくのでしょうか。