我欲は未だ洗い流されず(続き)

 先日の日記

なんだか急に「被災地の瓦礫を受け入れよう」キャンペーンが始まった。都内だってもうとっくに放射性物質が沢山降り注いでいるわけだし、そもそも福島の原発は関東の電力のために稼働していたんだから、多少放射性物質が付着していても、瓦礫ぐらい受け入れてもいいじゃない・・・なんて私も思ったんだけど、先日『ガイアの夜明け』を見ていたら、女川の漁師さん達が、今は漁の仕事がないので瓦礫を集める仕事をして収入を得ているが、その仕事も3月で打ち切りになってしまう、と言っていたので「おや?ならば女川で瓦礫の処理もすれば、仕事の無い人は随分と助かるのでは?」という疑問を抱いた。


 さらに、かつて関東大震災が起きた時に生じた瓦礫は横浜の埋め立てに利用されたという話もどこかで聞き、「あれ?だったら東北の瓦礫も、埋め立てに利用すればいいんじゃないの?」という疑問も浮かんだ。

の続き。


 そこで色々調べてみたら、既に瓦礫処理の受け入れを表明している東京都と静岡県島田市について、『瓦礫とカネ』とも言えるような事実を知った。


 もう数週間も経っているので、知っている人はとっくに知っている事だろうけど、東京都で瓦礫処理を担当する会社、東京臨海リサイクルパワー(株)は東電が95.5%出資しているグループ会社だった。そして、もう一つの受け入れ先である静岡県島田市の桜井勝郎市長はもともとは自身が桜井資源株式会社という産廃業者の社長で、現在は親族(一部情報では息子とも)が経営しているという。※ただ、今回の東北の瓦礫処理をこの会社が担当するという情報はまだ得られていません。


 瓦礫処理費用も、阪神大震災の時は1トン当たりの処理単価は約2万2千円だったのが、今回の震災の瓦礫では阪神の3倍弱の6万3千円。瓦礫にまざった海水の塩分を洗い落とすためだとかなんとか言っているんだけど、一体どんだけ丁寧な処理方法を目指しているんだか。高い費用だけ受けとって、実際は全て焼却処分なんじゃないの?細野豪志議員は「国民は原発の恩恵を受けて来たんだから、(瓦礫処理の)痛みは皆で分け合おう」みたいな事を言っていたんだけど、細野議員が思わず「痛み」という言葉を使った事の真意は、結局瓦礫を処理する地域には、多かれ少なかれ放射性物質もその地で引き受けてもらいますよという事だ。それに、「原発の恩恵」なんて言うけど、ごく普通の家庭に暮らす国民の誰が「電気使いたいから原発作ってー!」なんていつ要求した?むしろ勝手に原発を増やし続け、電力が余ってしまったから国民に「ガスはやめてIHにしたらどうでしょう?」などと電気を使わせようとしていたのは電力会社側じゃないか。


 焼却したら瓦礫は灰になって減るけど、放射性物質は消えずに残る。国は気前のいい事言ってるけど、結局税金だから、国民が負担しているという事だ。復興費用とか言って、皆が払った税金を、一部の産廃処理業者が受けとって、瓦礫焼却で出た濃縮された放射性物質はみんなで分け合いましょう、っておかしい。これじゃあ業者にとっては「痛み」じゃなくて「旨み」だ。


 さらに、当の被災地の岩手県岩泉町の伊達勝身町長や陸前高田市の戸羽太市長も、瓦礫は自分の所で処理して雇用につなげたいという主旨の発言をしている事がわかった。(長くなるので引用は割愛しますが、お二方の発言はネットで簡単に探せます。)それに何より、私が最初に疑問を持つきっかけになった『ガイアの夜明け』に出てくる女川の漁師さん達も、瓦礫処理(収拾)の仕事が3月で終了だと言っていた。ただ、漁師さん達は本当は漁をして稼ぎたいというのが本音なんだと思うけど、それでも、つなぎの仕事(瓦礫処理)すら失うのは大変だと思う。


 気仙沼では地盤沈下が激しいので、底上げするためには10tトラック140万台分の土砂が必要なんだそう。(自治体試算)やはり横浜のように、瓦礫をうまく埋め立てように再利用できないものなんだろうか?


 それに、広域処理、とキャッチフレーズのように簡単に言うけれど、その瓦礫を広域に運ぶために、何台のトラックでどれだけの距離を何往復するつもりなのか。その運搬にかかる費用も国が負担するらしい。つまり税金。


 北海道や静岡県辺りまでは福島原発由来の放射性物質が飛来してきた事が確認されているらしいけど、まだ日本にも放射性物質に汚染されていない地域は残されている。微量であると強調しつつも、放射性物質が全く含まれていないとは国も断言していない瓦礫をなぜわざわざ汚染されていない地域にまで届けるのか意味がわからない。しかも排気ガスまでまき散らしながら。だったら、私はまだ関東で処理した方がいいと思う。


 震災前に放送していたある保険会社のCMで、ガンを予防するための12ヶ条というものがあって(上野樹里さんが出ていた)、正確な記憶ではないけれど、そこでは『焦げた物は食べない』とか『かびの生えたものは食べない』という項目もあった。


 焦げた食べ物やカビの生えたものだって、「食べれば必ず病気になる」というものではないが、「でも体内に取り込まないのが好ましい」という事だと思う。でも体に良いものではないから、こうやって保険会社が「食べない方がいいよ」と提案しているのだろう。その論理で言えばタバコだって同じだし、タバコは国が禁煙をすすめている。なのになぜ放射性物質に関しては、国や保険会社や医者やマスコミが大っぴらに「体内に取り込まないで」と言わないのだろう。むしろ政府や、経済界や官僚の片棒をかつぐマスコミが「この程度なら平気だよ」と油断させる事ばかり発信する。じゃあタバコに関してもそう言って欲しい。(私は吸わないので、実際はそんな事言われたら迷惑だけど)


 普通、ちょっとくらい食べても平気かも知れないけど、食べない方がいいものというのは人に薦めないし、もし相手がそれを食べようかどうしようか悩んでいる時には、リスクがあるという事をまず伝えると思う。そんな当たり前の事をしない人達って一体何を守っているんだろう?


 野田政権は日本の国民の寿命を縮めたがっているとしか思えない。