人々の本性を暴く『美味しんぼ』

 CHAGE&ASKAの飛鳥が麻薬で逮捕かー。
 「クスリに手を出すなんて飛鳥は意志が弱い」と片付けるのは簡単だが、一度はその疑惑から免れた(アンナカだったというかなり苦しいものではあったが)のにそれでも再びクスリに手を出してしまったというその常習性の恐ろしさに目を向けるべきだ。一度手を出してしまったら終わり、という麻薬の恐ろしさに。


 飛鳥は悪いが、最も悪いのはそういう悪魔の薬を金儲けのために売り渡した人達で、だからこそ国によっては麻薬を持ち込んだ人間は死刑になるくらい重罪なのに、日本はその影響に反して罪が軽過ぎる。


 本題。
 福島原発事故の影響について、作者が自ら現場に足を運んで見たものを描いた『美味しんぼ』が話題になっている。(余談だが、こんな事が起こって初めておいしんぼ、という単語をパソコンに入力したもんだから、“甥新保”と変換された。甥っ子は新保ではない。)


 飯館村の方々など、実際にあの事故の日に被曝した人達以外の一般市民が「鼻血が出てる人がいるなんて知らない」というのならまだしも(それでも原発を50基以上抱える国の国民としてはこの事故に無関心と言わざるを得ないが)政治家や行政の人間や医者やマスコミの人間が、福島の原発事故で被曝した人の中に鼻血が出たり歯茎から出血したりする人が増えた事を「根拠のないデマ」と批判しているのは、それが嘘でも本気でも罪深い発言だなと思う。被曝の影響はどうあれ、原発事故以後に鼻血が出た人々の話を全く聞いた事がないなんて、福島に無関心だった証拠だ。


 恐ろしいのは、テレビ番組の中で専門家が「福島の事故のレベルで鼻血が出るのはありえない。宇宙にいる若田さんの方がよっぽど放射線を浴びている。」というような説明をしている事。


 宇宙やレントゲンの被曝は外部被曝だけじゃないですか。外部被曝というのは放射性物質が発する放射線を、文字通り外から浴びたもので、それでも放射線というのは体内を通過し、その際に細胞を傷つけるので、癌など悪い組織がある場合は低線量の放射線をわざと浴びて、悪い組織を壊すという治療法もあるが、それでも良い細胞も破壊するので、放射線治療を受けた人の中にはだるくなったりしてしまう人もいる。


 福島の原発事故の場合、放射性物質そのものが事故によって大気中に放出されてしまったので、事故直後に政府やマスコミが避難勧告も出さず、マスコミは自分達だけ逃げて住民には「安全です」という政府のそれこそデマを一緒になって流し続けた為に、何も知らない住民は放射性物質そのものを浴び、吸い、人によっては放射性物質が付着したものを飲食してしまい、身体の中に放射性物質を取り入れてしまった。


 そして、体内に入り込んだ放射性物質は体内に留まり続け、体の中から放射線を発して細胞や粘膜やらを傷つけている。こっちの場合は同じ被曝でも内部被曝と言って、若田さん達や防護服を着て放射線を浴びている人達とは症状が違うものになる。


 腹立たしいのは、専門家と称する人ならばその違いは知っていて当然なはずなのに、知らばっくれてコメントしている専門家や、あえて鼻血の出た原発に近い住民の方ではなく、福島市の人達にインタビューして「鼻血なんて出た事ない」というコメントを放送しているテレビ番組。マスコミの人達は、原発事故直後に自分達が逃げる前に一言住民に「ここは危ないから逃げて」と伝える事もせず、みすみす被曝させた上に今もその人達を踏みつけている。