人には責任を求めるが、責任を取れている人がどれくらいいるのか

 安田純平さんが無事に帰国できて本当に良かった。余計なお世話だが、精神的なケアは家族や友人の愛情だけでなく、専門家に治療してもらった方がいいと思う。3年4ヶ月の拘束というのは精神的な傷がかなり深いだろうから。

 私はネットの書き込みは見ないようにしていて、ツイッターも好きな人のものしか読まないようにしているのだが、安田さんの件に関してネット上で批判があると聞いて、つくづくネットに深入りしないようにしている自分の選択は間違っていなかったと実感した。狂ってるんだね、可哀想に。

 辛坊治郎さんだっけ?間違っていたらごめんなさいだけど、何年か前にヨットで遭難してしまったキャスターの人がいたと思うんだけど、私はこの人が無事に救助された時だって「ああ良かった」と思いましたよ。仕事じゃなく冒険のようなものだろうけど「自己責任!好きで危険な海に繰り出したのだから救助を求めず自力で泳いで帰るべき!」なんて思わなかった。普通、というと「普通って何?」と言われてしまうかも知れないが、少なくとも私の中の普通は、この程度の事は当たり前に行われるものだと思うし、辛坊治郎さんは国民に謝罪などしなくていいと思う。救助隊にお礼は言って欲しいけど。

 しかも安田さんの場合はジャーナリストという職業として危険地帯に踏み込んでいったのだから、同じ国民としてだけでなく人間として助けるのは当然だと思っていた。逆に、危ない場所でないなら、わざわざジャーナリストが行く必要もないし。日本は報道が広告費や政権の圧力に負けてワイドショー化しているから、国や企業が公式に発表するものを伝言するのが報道だと勘違いしちゃってるんじゃないの?じゃあ、例えば北朝鮮の発表をそのまま報じるのが報道ですか?

 大きな自然災害が起きて自分の住む地域が孤立してしまった時に、そこの住民がツイッターなどで発するメッセージの中に「この酷い状況を拡散して下さい」っていうものがあるけど、そのツイッターの代わりをジャーナリストがやってるんですよ。ジャーナリストの仕事を軽く見ている人は、自分に関係のない外国での出来事だから行く必要も伝える必要もないっていうんですかね。

 中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区にて、中国当局ウイグル人などのイスラム教徒およそ100万人を裁判なしで強制収容しているとBBCが報じていた。中国はこれを否定し職業訓練所だと主張しているのだが、BBCが収容所と思われる建物周辺や、収容されている人と面会してきた家族を取材しようとすると、当局の人間や私服(制服ではなくTシャツ姿)の中国人がカメラの前に割って入って妨害していた。その取材をしているジョン・サドワース記者が仮に中国当局に拘束されたとしても、イギリス人は「そんな所に取材に行くからだ!自己責任だ!」なんて言わないだろう。普通言わないよ。近年の日本人はどうかしている。