身代金には文句を言うが、権力者が税金をお友達にバラまく事には寛大な日本人

 安田純平さんに対しての『自己責任論』。
 先日の日記でも書いたが、私はネット上での意見は読むに値しない(自分も含めて)から見ないようにしているのに、徐々にテレビでもやり出して、嫌でも目にするようになってしまった。ビートたけしさんにはがっかりだ。何を登山家と一緒にしているのか。(登山家の方々を批判しているのではなく、ジャーナリストと登山家を同列に語るたけしさんの愚かさを批判しています。)

 本当は書く労力を使うのもバカバカしい話だが、そもそも他人が押し付ける自己責任って何なんだ?

 安田さんが「俺が大変な目に遭ってしまったんだから日本政府は国として助けるのが当然でしょ!」とか頼んできたのなら、一部で溢れている「自分の意志で行ったのだから助けを求めるのはお門違い。」という意見も百歩譲ってうなずける。(私は同調しないが、そういう事を言い出す人がいるという事は理解できる。)しかし、それも安田さんが帰国して数ヶ月経って元気に活動を再開してからの話だろう。安田さんのケースは置いといて、自分の趣味で冒険をした人(何度も名前を出して申し訳ないが海で遭難した辛坊治郎さんとか、風船おじさんとか)だとしても、命からがら帰って来た人に対して真っ先に上目線で偉そうに「自己責任!」という言葉を投げつける人の神経がわからない。鬼か。そんな鬼のくせに人の道を説くのか。

 結果的に安田さんは捕まってしまったが、自己責任という言葉を無理矢理当てはめるなら、その「捕まって大変な日々を過ごした」事で充分自己の責任は負っただろう。捕まるつもりで捕まったのではなく、取材をしたかったのに捕まってしまったのだ。冒険家だって、遭難するつもりで遭難したのではない。遭難じゃなく、海賊に拉致されて同じように人質となって身代金を請求されていたかもしれない。そんなのは結果であって、始めからそうなるつもりだったのではない。結果だけ捉えて鬼のくせに鬼の首を獲ったように「人に迷惑かけやがって!」というのは鬼でなくても性格が悪い無知な人間になら誰にでもできる。

 「政府は明言を避けるが、各国政府は人質解放のために身代金を支払っている」「身代金がテロリストの資金になる」と主張する人もいるが、安田さんの件が起きる以前から、安田さんとか危険地帯に乗り込むジャーナリスト以上に普段現地のテロや紛争に対して危機を抱いていたのか?そしてその「人質解放のために身代金を支払っている」「テロリストの資金になる」、という情報だって、どこかのジャーナリストが危険地帯に乗り込んで取材してくれたから得られた情報かも知れないじゃないですか。

 繰り返すが、私は辛坊さんが無事に戻って来られて本当に良かったなぁと思ったし、辛坊さんが再び海にチャレンジしたいと言っても応援する(金銭的にでなく心の中で)。誰のために生きてるの。

 まして、安田純平さんの場合は、市民が武装集団に連日のように襲われている現実を世界に伝えようとして現地を取材していたんでしょう。日本で一部の人間がバカみたいに「ハッピーハロウィィィーン!」とかはしゃいでる間にも、同じ地球上では無抵抗の子供まで爆撃で命を奪われているという事を、安田さんは見て見ぬ振りができなかっただけなのに。

 「私達に迷惑がかかるから、子供が殺されている事なんて放っておきなよ!」と言うのが今の日本の正論なのだろうか?